心の別荘/『かもめ食堂』(みんなの本気読書感想文)

ヘルシンキの街角にある「かもめ食堂」。日本人女性のサチエが店主をつとめるその食堂の看板メニューは、彼女が心をこめて握る「おにぎり」。けれども、お客といえば、日本おたくの青年トンミただひとり。そんな「かもめ食堂」に、ミドリとマサコという訳あり気な日本人女性がやってきて…。 –このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

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レコメンドレビュー

ささ(@anakasikona828)

日本から遥か遠く、フィンランドのヘルシンキの街角に「かもめ食堂」はある。日本人にとってみれば縁もゆかりもない土地だ。なのに、どうしてか、読後にはまるまるとしたかもめが飛ぶフィンランドの風景と生活に憧れを抱かずにはいられない。

メインレビュー

以下、内容やネタバレを含む場合があります

三人のヒロインであるサチコ、ミドリ、マサコがそれぞれ抱える問題は日本にある。それも、日本の封建的な家庭事情であったりする。それらの問題から抜け出すために、あるいは、離れるために、彼女たちはフィンランドに来たのだろう。誰か頼れる人がいれば安心であるのに、フィンランドでは孤独だ。ただ、日本に彼女たちが頼ることのできた人がいたのだろうかと言われれば、おそらくいなかった。見知った人間のいる日本にいれば、豊かに過ごせるというわけではないのだ。

こんなにもフィンランドが美しく見えるのは、すっきりとしているからだろう。ジャージが基本のフィンランド男性、かもめ食堂はシンプルなインテリア、コーヒーのただ飲みを続けるトンミくんと、この小説のなかには着飾ったものがあまりない。つまり、雑然としていなくて、心地よいのだ。

ストーリーも淡々とテンポよく進んでいく。あたたかく、ゆるやかに。いまあるしがらみだとかを一度どこかにポーンと投げ出してくれる。ヒロインたちにとってフィンランドがそうであったように、自分にとってこの『かもめ食堂』という小説は、苦しみから離れて、もう一度遠くから見つめ直すところとなった。心の別荘と言えそうなぐらいだ。  シナモンロールにかぶりついて、コーヒーを飲む。そして、頭のなかを整頓する。この『かもめ食堂』の素朴で質素なフィンランドの生活が雑然とした日本にいる自分を豊かにする方法かもしれない。

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